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All About Japan「オーストラリア」ガイド
平野 美紀



  インターネットによる様々な情報収集が可能になった今日、旅の情報もネット上から収集し、それを参考に旅をする旅行者が増えている。最近では空港などで、ネットで見つけた必要な情報を自分のパソコンからプリントアウトし、1冊に束ねたオリジナルのガイドブックを再度チェックする旅行者の姿も多く目にするようになった。こうした新しいタイプの情報収集の手段が猛烈な勢いで広まっているのはなぜなのだろう?



ネット上には旅行者が本当に知りたい情報がある!

  インターネットが身近な存在になる以前は、遠く離れた海外の情報などはとくに入手しにくく、頼れるものはガイドブックと旅行のプロである旅行会社くらいだったから、まず書店でガイドブックを購入し、旅行会社に相談して、旅行(主にパッケージツアー)を予約するというのが主流だった。もちろん今でもこのスタイルが無くなってしまったわけではないが、ちょっと旅慣れた旅行者、あるいは他人と同じことはしたくないという個性派の旅行者は、どれをとっても似たような情報しか載っていないガイドブックや旅行会社のパッケージツアーでは飽き足らず、もっと違う「自分だけのオリジナルな旅行がしたい」と考えて始めていた。そこに、誰でも手軽に情報公開できるツール“インターネット”が登場したのである。
  この「自分だけのオリジナルな旅行」ニーズが、インターネットの普及と共に年々高まりつつあるのは、「自分でもひとりでできる!旅行会社に頼らなくても旅行できる!」と確信できるようになる情報が、ネット上にはたくさんコロがっているから。ネット上では
「昨日帰ってきました!行ってみたらこんなところだったよ。行き方はカンタン…」といった個人レベルで公開されている最新の情報が簡単に手に入る。その上、公の意見を手軽に聞くことができる『掲示板』なども活用すれば、自宅のパソコンから、出発前に知っておきたい現地の情報を数千キロ離れた海外の旅行先の在住者などから入手することも可能なのだ。

  ネット上の口コミ情報と言われるものは『個人が発信する情報サイト』や『メールマガジン』の他、『メーリングリスト』、『掲示板』などがあるが、なぜ人々はこのようにネット上に情報を求めるのだろう?それは、一番にはガイドブックの情報だけでは不安(印刷物の情報はほとんどの場合1年前くらいの情報なので、現在はどうなっているのか?もしかして変わっているのでは?という不安)ということと、広告などではなく、本当に行ってみた人の“真実の声”を聞いてみたいという思いの2つからなっていると思う。
  実際、私が担当しているAll About Japan(プロがガイドする情報ポータルサイト)オーストラリア・サイト上の掲示板にも、毎日のように現地の生の情報を求める声が書き込まれている。しかもネット上には、「自力で行けば旅行会社に頼むよりもずっと安く行くことができるよ」といった情報までコロがっているのだから、できる限り安く、そして何回も海外旅行をしたい旅行者には、本当に魅力的なツールなのだ。その魅力に気がついた人達は、こうしてネット上の口コミ・コミュニティにどんどんハマってしまうのかも知れない。

旅行会社は、旅行者が知りたい情報を提供していない?


  旅行者が本当に知りたい情報とは何なのだろう?それはたぶん一番には「治安や地理的なことなど現地の情報」そして、「実際行ってみた感想」、「できる限り安く旅行する方法」「穴場情報」と続くのではないかと思う。これらの情報を旅行会社が提供していないかといえば、必ずしもそうではないのかもしれないが、旅行会社の人が「ウチのツアーは…」と言ったところから既に“宣伝文句”と捉えられてしまう傾向が強い。それよりも消費者の立場に立って、実際使った(行った)人の意見を聞いてみたいと思うし、他人も誉めるのだから間違いないと思うのが人情というもの。そして現地情報に至っては、やはり現地に根付いた人や何度もその地を訪れたことのある旅の達人に聞くのが手っ取り早く、的確な答えが得られるだろうと考えるのも当然で、しかもE-Mailや掲示板で安価で簡単に聞けるようになった今、こうした情報を求める人達がネット上に群がらないはずはない。

 
 旅行のプロであるはずの旅行会社に聞かずに、ネット上の口コミ・コミュニティから情報を得ようとする理由はいくつかある。まず1つには、単にちょっと聞きたいからと旅行会社のドアを叩くことにはためらうことがあっても、ネット上で聞くのだったら、友達に話しかける気分で気軽に聞ける。これは「旅行会社は堅苦しい雰囲気がある」と考えている人が多い表れなのかも知れない。そして最大のポイントは、「広告や宣伝文句ではない真実の声を聞ける」という点だと思う。実際に旅行してきた人がネット上の掲示板などで発言している「○○旅行社のツアーは安くて、サービスもよかった」、「お土産は免税店で買わずに、スーパーで買ったコレを買おう」なんていう話は、どう考えても“旅行(+それに付随するもの)”という商品を売る旅行会社にはできないからだ。

  また「穴場情報」に限っていえば、こうした情報を求めるのは、ガイドブックなどで手に入る一般的な情報ではもう満足できなくなったリピーターに多い。かといって、そういった人達は決して特定層に限ったわけではなく、こうして誰でもが簡単に手軽に海外旅行に出掛けられるようになった今日では、旅行に出掛ける人達の70〜80%がこうした情報を求めているのではないかと思う。こういったリピーター達が求める情報を、現在の旅行会社はまったくといっていいほど提供していないと私は思う。日本の主な旅行会社が販売しているパッケージツアーは、どれもありきたりでガイドブックをおさらいするだけに過ぎないものが多いと感じるからだ。(当地オーストラリアについていえば、いまだ「ゴールドコースト」と「ケアンズ」が中心で、さっぱりパッとしないものばかり…)

  「自分だけのオリジナルな旅行」をしたい旅行者が増え、しかも何度も旅行をしたいと考えるリピーターがその中心になっているのなら、その人達がやってみたいと思う旅行を提案できる情報量と経験を持った人のところに、人々が集まるのは自然なことなのだろう。

旅行のプロとは?


  では、旅行のプロとは一体何なのだろう?確かに “旅行”という商品を売って、それぞれのパーツに精通している旅行会社を『旅行のプロ』であると認識していることは、今も昔も変わっていない(はず)。でも実際に旅行会社に旅を依頼してからも、その認識が維持されているのだろうか?

  ある日、私が担当しているAll About Japanのオーストラリア・サイトの掲示板(http://board.allabout.co.jp/travelaustralia/)にこんな内容の書き込みがあった。

 
「ゴールドコーストへの旅行を考えているが車椅子のため、ツアーに含まれている現地送迎バスに乗り移れないと相談したところ、「個別には対応出来ない。移動は勝手にやってくれ。」と言われ、旅行を中止しようかと思った」というものだ。(実際の書き込みは掲示板でご覧いただけます)

  これを見て、私は「一体どこの旅行会社なのか?」と無性に腹が立った。私の知っている限りでは、欧米の旅行会社ではこんな対応をするところはない。欧米の旅行会社のツアーでは、どんなに僻地であっても、車椅子の人が旅行を楽しんでいる姿を目にすることができるからだ。もし、ツアーの都合上どうしても送迎バス以外の手配ができなかったとしても、せめてタクシーで移動したらいくらになるとか、それ以外の移動手段を調べて適切にアドバイスしてあげるのが、本当の『旅のプロ』なのではないかと思う。

  また、パッケージツアー料金自体をなるべく安く押さえる為に、現地の送迎・説明をよく事情のわかっていない現地アルバイトに依頼したり、現地で半ば強制的に押し付けられる高いオプショナルツアーなどもネット上ではすこぶる評判がよくない。旅行者は現地で自分達を出迎えてくれる旅行会社の人を「アルバイトだから仕方ない」という風には見ない。「いろいろ質問しても返ってくるのはありきたりなことばかりで、まるでプロの意識が感じられない…」とか、「旅行会社のオプショナルツアーを申し込んだが、現地のチラシを見たら同じような内容で半額だった…」といった厳しい意見を聞いたことがあるが、こうしたひとつひとつの些細な出来事が積み重なって、ネット上の掲示板に「○○ツアーに参加したけど、最悪だった」なんていう書き込みをされてしまうのだと思う。
 
 こうした「旅行に対してイヤな思い出」を作ってしまった人達が、依頼した旅行会社を『旅のプロ』と認識し続けているかどうかは、ちょっと疑問である。

ネット上の口コミ情報の生かし方と旅行会社に求められているもの


  私が担当しているAll About Japanのオーストラリア・サイトを訪れる人のほとんどは海外旅行によく出掛け、しかもオーストラリアには何度も訪れているというリピーターが多い。この事実は、旅行会社の人にとっては寝耳に水なのではないかと思う。なぜならば、旅行会社の人達は皆口を揃えて「オーストラリアはリピートしない所」という認識を持っていると聞いているから。実際、このサイトの運営が開始された当初、All About Japanの本部の人達からも同じ意見が出されていたようだ。しかし蓋を開けてみたら、ほとんどの人がリピーターで、しかもこうした人達は、例のテロ事件などにも屈しないほど本当にオーストラリアが好きで、だから絶対に行くと言う人達ばかりだった。
  All About Japanのオーストラリア・サイトにこうした人達が集まるようになった理由は簡単だ。このサイトにはネット上で情報を収集する人達が求める「現地だからこそ手に入る情報」が溢れている。しかもガイドブックなどでは紹介しないような「穴場情報」などもあり、質問をしても比較的早く回答が得られるコミュニケーションの場があるから。これも私がシドニー在住であるからこそ、なのかもしれないけれど(笑)。

 
 実際、日本の旅行会社には見捨てられてしまった(?)シドニーの情報を多く発信することによって、サイト開設当初はゴールドコースト関連ページの方が多かったアクセスが、シドニーへと移行しつつある。これは、「旅行会社のツアーもあまりおいしくない(安くない)し、オプショナルツアーもたいしたものがない、ガイドブックでもたいした情報は得られない、だからシドニーはつまらない」と思っていた人達が目を向け始めている証拠だと思う。人が注目すること、やってみたいと思うことはどこにでもあるのに、それに気づかないで通り過ぎてしまう…、ちょっと視点を変えてみれば思わぬ発見があるのに…。
  こうしたネット上で注目される情報は、旅行者だけでなく、旅行会社にとっても有益なはず。皆が書き込む発言や個人サイトで公開されている旅行記などを読んでいると、人々が求めている旅行とは何か?というのが見えてくると思う。多少耳が痛いことがあっても、旅行会社のマーケティングにとってこれほど正直で便利なツールはない。

 
 海外旅行というものが手軽で身近な存在になった今、近所のコンビニ的な楽しさがある気軽な旅行会社または、旅行会社サイトというものがあってもいいんじゃないのだろうかと思うことがある。ふらっと気軽に立ち寄れて、隅々まで見まわしてみると思わぬ発見があったり、便利なツールがたくさんあって、ちょっとだけでも充実感がある。しかも各店舗(ブランド)ごとにオリジナリティもある。こんな楽しげな旅行会社があったら、私だってきっと何度でも足を運んでしまうだろう(笑)。

(END)