楽しくわかるニッポン通訳案内--No.13 (英訳バージョン)
TOP >> SQUARE >> ニッポン案内

中山 幸男
[profile]


  外国人になんでも見えたものを次々に紹介していくのが通訳ガイドの仕事。lookという単語を使う頻度がやたらと高い。

 ご覧ください。あそこに五重の塔が見えますよ
 (英 訳)
 とか、
 招き猫なんですけど、あんなにたくさん並んでいますよ
 (英 訳)

 と言った調子。中でも一番喜んでもらえるのは、

 どうぞ富士山をご覧ください。とてもはっきりと見えますよ
 (英 訳)

  と言ったときで、客の満足そうな顔を見ると、こちらもうれしくなってくる。富士山はまだまだ日本の象徴として、一目でもいいから見たいという外国人客が多い。
  外国人向けの日帰り旅行には「富士山ツアー」と銘打ったものもあるが、こうしたコースにガイドとして出かける前日ほど、天気予報が気になることはない。富士山ツアーで富士山が見えないのに説明を続けるのは、水戸黄門の時代劇なのに、肝心の黄門様が出ないようなものである。夏場は晴れていても見えないことも多い。また、山の天気は変わりやすいので、さっきまで見えていたのに、急に隠れてしまうこともある。見えているうちに、写真などは早めに撮らせておいたほうが賢明だ。
  すぐに姿が見えなくなるといえば、それこそ目の前を飛ぶ鳥の名前を急いで教えてあげることもある。

 上を向いてください。トンビが見えますよ
 (英 訳)

 といった具合だ。日本では海辺などに行くとよくトンビが飛んでいたりする。咄嗟のときにさっと口をついて出てくるように、鳥や魚などの名前など英語であれこれ覚えておく必要がある。


  観光案内中、「右手に見えるのは〜です」や「左手に見えるのは〜です」は、ガイドが始終口にするセリフだ。英語では、

 右手に見えますは小田原城です
 (英 訳)
 とか、
 左手に見えますのは芦ノ湖です
 (英 訳)

 のように表現する。on the right [left]は、on your right [left]のように言い換えてもよい。または、on the [your] right [left]-hand sideと言ったりすることも可能。建物などは急に見えなくなる心配もないので、比較的ゆったりと案内できる。
 雷門で仁王の説明はこんなふうにやっている。

 雷門は浅草寺の表門です。門の守り神は右手に風神という風の神様、左手には雷神という雷の神様がいます
 (英 訳)

 仁王の片方の像は必ず口を開いていて、もう一方の像は口を閉じている。そのことも案内しておく。

 右手のものは口が開いていて、左手のものは口を閉じています。宇宙の始まりと終わりを表しているのです
 (英 訳)

 のような説明が可能だ。


 正面に見えるものについては、

 真っ正面に見えるのは東京タワーです
 (英 訳)


  のように表現できる。rightは強調するときに使うとよい。
  以前、ロンドン市内の定期観光に参加したときの女性ガイドは、「正面に見えるのは〜です」を〜 is straight ahead.と言う代わりに、Straight ahead is 〜.と表現していた。
  
「右手に見えるのは〜です」はOn the right is 〜.で、「左手に見えるのは〜です」は、On the left is 〜.とすべてこの調子。英語の倒置法というものである。なるほど、このほうが少しでも顔を早く向けられて好都合。私も自分が日本でガイドするときの参考になった。
  先の「真っ正面に見えるのに東京タワー」の文は、Right in front of us is Tokyo Tower.のようにも表現できるというわけである。





  読者の皆さんの中には英語を学習している人も多いことでしょう。せっかく英語を覚えても、なかなか使うチャンスがないというときは、どうしたらいいのだろうか? 実は英語でいろいろ話す練習は,相手がいなくてもできるものなのだ。街を歩いていたり,電車に乗っているときなど,目に見える光景について何かぶつぶつ英語でつぶやいてみればよい。自分1人なら、恥ずかしがる必要はどこにもない。いつでもどこでも自分で英語圏の世界を作り出せるというわけ。

 新しくできたスターバックスの店が右手にあります
 (英 訳)

 反対側には大きな神社があります
 (英 訳)

  といった調子。言い間違いをしながら、だんだんきちんとした言い方ができるようになっていく。私もガイドになって、「右に見えますのは〜です」とか「左に見えますのは〜です」とやっているうちに,英語を話すのがだいぶラクになり,何でも見えたものを英語にする癖をつけると効果があることを実感した。実際、ガイドという仕事はこれを1日中、やっているわけである。