ガイドブックのない国 バングラデシュ ……Page >>>>

■お客様は神様のメッセンジャー

  乾季、雨季に限らず、行く度に新しい発見があるのはこの国の季節かそれともこの国の奥深さがあるからだろうか。雨の音も風の音も毎回同じではない。食卓にのるカレーの味も、カーステレオから流れる甲高い歌の声も、子供の声も、道をふさぐリキシャ夫の顔も違って見える。同じ街の同じ道を通り抜けても、その街の匂いも違って感じるのはなぜだろう。何もないことは何かがあること、混沌とした中にも人々の生きる姿に感動があったり、美しい絹のサリー姿の女性を眺め、傍らで整然と積んだ果物やを眺める。異国はたった飛行機で10時間で存在する。
  決して二度と会わないような人々とも沢山接してきた。家の前から手招きされ「お茶を飲みませんか」と声をかけられる。また「食事は?」と尋ねられる。一緒に食事をすることがこの国の人々の喜びであり、他人に施すことは神様への恵みと信じている。分かち合う精神があり、ホスピタリティの国、フレンドリーで屈託のない国民性は旅人の心を掴んで放さない。そしてこの国を訪れて、この国の良さを知ればリピーターとなっていくのではないだろうか。バングラデシュに魅せられて何十回と渡航を重ねる友人は“人々のふれあい”を第一番に挙げている。

■自然の脅威 光と影

  ヒマラヤから流れる水が徐々に水嵩を増し、平坦な流れのない川は氾濫し、国土に広がる。この時期、一面に広がった川は海のようになり、田んぼや畑は水の下、その川面水草や睡蓮が浮かび、水面の光と影、時間によって変化するこの光景を“水の神話”と呼ぶ詩人もいる。船が行き交い、洪水は自然のもたらす脅威ではあるが、洪水がなかったら土地は乾燥し、肥沃地帯にならない。彼等にはこの洪水は一つの季節であり、「いつものこと」としてとらえている。しかし、今日バングラデシュの北方に位置するインド、ネパール、ブータンなどの国々の森林伐採により、洪水の被害は年毎に増している。海抜ゼロメートル地帯のベンガル湾沿いは洪水時、その美しい景色と裏腹に、自然の脅威は貧困を生み出す。自然の恵みと脅威が共存する国でもある。

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